勇壮・華麗な曳き廻しの感動

関ヶ原の合戦から六十四年後、
受け継がれてきた八輛の山車。
一瞬の輝きをもとめて集う仲間と共に
作り上げていく伝統ある祭り。
挙母神社に八町が集まる荘厳な時を
後世へ送り続ける。

挙母祭りとは

挙母祭りは「挙母神社」の大祭で十月の第三日曜日とその前日に挙行されます。
この二日間下町市街地と上町樹木地区では、八輛の山車が勇壮に曳き廻され、三河の三大祭りとして古くから称賛を受けています。
挙母祭りの八輛の山車の特徴は、唐木などの銘木を用いた細密な彫刻類、金糸・色糸で刺繍を施した絢爛豪華な大幕、土台から組み込み後方に突き出した梶棒などです。

祭りの最大の見所は二日目の本楽です。
八輛の山車が揃い軽快な囃子に合わせ挙母神社へ曳き込まれ奉納された後、曳き出しが行われると、祭りは最高潮を迎えます。
この勇壮な祭りに毎年全国から多くの方に訪れて頂いています。

挙母祭りは郷土の歴史を伝えてくれる貴重な文化遺産であり、地域活性化の原点でもあります。

挙母神社の由緒

神社の由緒によりますと、一千年以上の昔に大国主命(おおくにぬしのみこと)の子孫、大賀茂都美命(おおかもづみのみみこと)がこの地に住んでいました。
ある時、近くの衣川(今の矢作川)で、美しい母鴨が子鴨を羽の下へ抱いて森へ入ると、たちまち神となり、大賀茂都美命にご託宣(お告げ)がありました。
その後母鴨は遥か天へ登っていきました。
ここから、群の名を「賀茂(かも)」、この場所を母が挙がる「挙母」と改め、この森に神社を造営し子守大明神として崇めました。

また江戸時代、寛政年間に書かれた「挙母記」には、鈴木某が吉野から奥州の源義経のところへいく途中、この三河で義経の討死を聞いてここに留まり、大和吉野から挙母の守り神であった子守(こもり)、毘森(ひもり)、勝手(かって)の三明神の御分霊を迎えて祭ったと記されています。
子守大明神は、歴代挙母藩主が敬い、またこの地方の庶民崇敬の中心となっていました。
その後、明治4年(1871)に挙母神社と改められ、昭和55年(1980)より六級社(県社相当)に昇級されました。

御祭神は高皇産靈神(たかみむすびのかみ)、天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇々藝尊(あめにぎしくににぎしあまつひこひこほのににぎのみこと)、天萬栲幡千幡比売命(あめよろずたくはたちはたひめのみこと)、天之水分神(あめのみくまりのかみ)、国之水分神(くにのみくまりのかみ)の五柱です。

挙母祭りの由来

挙母祭りは挙母神社の大祭です。
祭りでは八輛の山車が曳き出されますが、その起源については諸説が存在します。
記録として確認できる最古のものとして、寛文4年(1664)に『祭りに飾り車四輛(東町、本町、中町、神明町)と西町、竹生町の笠鉾、それに大手町の獅子が出』とあります。
また、寛延3年(1750)には藩主、内藤政苗公が南町に対し獅子を止め、飾り車にするように命じました。
そして、安永6年(1777)に南町、その以前に西町ができ、安永7年(1778)の記録に『北町、竹生町が飾り車を出し、併せて八輛となった』とあります。
その後、町民文化の完熟期である文化(1804年以降)・文政年間を経て、現在のような山車を中心とした形態の祭りとして完成したのは江戸後期から明治初期と考えられています。

祭りが成立したころは八輛が揃った祭りでしたが、天明2年(1782)下町にあった挙母城が樹木台の童子山へ移転したとき、東町、南町、本町の三町が新しい城の正面門(大手門)に移り住み、城下町を形成しました。
そこのとにより、現在では下町に残った五町と分かれています。
しかし、祭り最大行事の神社奉納には、この八輛の山車が一同に揃い、その様は三河三大祭りとして古くから称賛を受けています。
山車八輛は、昭和39年(1964)に愛知県の有形民俗文化財に指定され、昭和45年(1970)には挙母祭りばやしが豊田市の無形民俗文化財となっています。

祭りの行事

試楽(一日目)

午前

下町町内曳き(中町、神明町、竹生町、西町、喜多町)
猩々の舞(中町が行う)
上町三町曳き(本町、東町、南町)

午後

下町五町曳き
上町町内曳き
巫女の舞
禊、七度参り
神事
神輿渡御
若衆による祭りの触れ廻り

本楽(二日目)

午前

神前花火打上げ
各町の山車は神社曳き込みに備え所定の場所に集合
挙母神社へ山車曳き込み(10時の花火を合図に曳き込みを開始する)

午後

獅子舞(南町が華車の前で行う)
神事・神輿渡御
巫女の舞
猩々の舞奉納(中町)
七福神おどり(喜多町)
神輿帰還
山車の曳き出し(花火が数百発打ち上げられる)
八町泣き別れ
各町内の山車蔵に戻る
山おろし

祭り囃子

山車の巡行に欠かすことの出来ない囃子は、八町がそれぞれに曲を持っており、同じ曲であっても、曲名に当てる字が異なっていたり、町の特徴で少し変化していたりしています。
昭和45年4月14日「挙母祭り山車囃子保存会」として、八町全ての囃子が豊田市の無形民俗文化財の指定を受けています。

1)楽器

三味線、鼓、笛(能管、篠笛)、小太鼓(こばち)、大太鼓(大胴)大皮が使用されています。

2)代表曲

本 町:七草、徳川、帰り車、加津古、鎧引
東 町:本打上げ、徳川、追回し、らっぱ節、道引き
南 町:竹鈴、沈輪、将正木、与ろさ
中 町:角古、追廻し、宮舞囃子、竹雀、新囃子
神明町:新典、十日えびす、挙母小唄、千代の舞、旧典
竹生町:オランダ、竹雀、十日恵比寿、千代の舞、新囃子
西 町:天土古、能管天土古、竜神、本業、天土古打分
喜多町:打分、千代の舞、玉乃輿、丹前